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ピアノの音程・ピッチの引き上げ

どうしてピアノはピッチが下がるのでしょう。

普通に調律しても、ピアノはA=440Hzの標準ピッチに戻らないの?

 ピアノは真ん中のCの音の上の、Aの音が国際的な標準ピッチである440Hz(1秒に440回振動すること)のときに一番良い状態になるよう設計されています。このピッチにしたときに、ピアノはそのパワーと音質の幅を最大限に発揮することができ、また、他の楽器と合わせることもできるのです。ピアノが、このピッチからはずれている場合は、当然、このピッチに戻してやる必要が生じます。定期的な調律により、ピアノのピッチをいつもこの標準ピッチに保つことで、安定したピアノの状態を作り出すことが出来ます。ピアノの音律は、2百数十本の弦の20トンにも上る張力と、太い柱と鉄骨の組み合わせからなる強力なバック(構造体)の均衡から成り立っています。調律するという事は、この均衡を維持することです。もしも大幅に均衡がくずれて、ピッチが大きく下がってしまったら、それを元に戻すには、ただ、弦を引っ張って音程をあげるという作業だけでは出来ません。二百本以上の弦の張力の均衡をとってやらなければならないのです。

 また、音程のおかしなピアノでも毎日弾き続けていると、それにだんだん耳が慣らされてきます。人は誰でももともとは正しい音感を持っています。それは、全く自然なものだからです。でもピアノは毎日少しずつくるい続け、毎日同じピアノに向かう人は気づかぬ内にそれに適応してしまうのです。

 したがって、調律をせずにおくことは、ピアノを弾く人にとっても、ピアノそのものにとっても害になることです。

どうしてピアノはピッチが下がるのでしょう。

ピアノの音程が変化する原因は、主に次の2つです。1つは、弦が伸びてピッチが下がる場合。次に湿度の変化によるサウンドボード(響板)の伸縮です。特に新しいピアノの場合、最初の2年ほどは新しい弦が伸びきり、木製のパーツが落ちつくまで、急激にピッチが下がります。この時期に正常なピッチにピアノを調律することは、弦の張力とピアノの構造との安定した均衡を得る上で、とても重要です。

 気候の変化もピッチの変化の大きな原因です。サウンドボードが木製だからです。木は水分をすってふくらみ、乾燥して縮みます。サウンドボードは弦の張ってある方向にもりあがっていて、駒を介して弦と接触します。サウンドボードがふくらむと、駒を持ち上げるので、弦の張力は増し、ピッチが上がります。サウンドボードが乾燥して縮むと、駒が下がり、弦の張力が減少しピッチが下がります。乾燥時のピッチ下降の方が、湿気たときのピッチの上昇を上回るので、調律をしなければピアノのピッチは年々下がってくるわけです。従って、ピアノの大敵は湿度の変化です。これが大きく変化するほど悪影響を与えます。また、乾燥しすぎは、サウンドボードのひび割れにつながります。これはピアノにとって致命傷です。十分注意してください。

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普通に調律しても、ピアノはA=440Hzの標準ピッチに戻らないの?

 もしもピアノが調律せずにしばらくの期間放ってあったなら、ピッチは標準のA=440よりかなり下がっているはずです。ピッチをあげると言うことは、弦の張力を増すことですから、ピアノの約220本にのぼる弦をすべてあわせるとなると、全体でかなりの張力の増加となります。これらの力が、ピアノの鉄骨と支柱を中心とするバック(構造体)にかかってくるのですから、ピアノは目にはみえないけれど、その力に耐えるため、変形します。ちなみに弦の張力は1本につき約100kgです。従って、ピアノぜんたいでは20トンをこえる力がかかっていることになります。

 調律は1本1本の弦の張力をましていくわけですが、ここでやっかいな問題があります。すなわち、1本、また1本--と次々にピッチを上げていくと、先にあわせた弦の張力が平均化され、順次低下していくということです。そのため、せっかく正しいピッチにしておいても、調律が進むにつれ、それらはだんだん下がってしまいます。どれくらい下がるかは、ピアノによって皆違いますし、くるいかたによっても当然違うわけですから、いちがいには言えません。と、なると、ピッチを上げるための調律は、最初は少し高めに音程をとりながら、ざっと全体の張力を高めなければなりません。その時の音程の下がり方もピアノによって、また、音域によって違いますので、どれくらい高めにとるかは、経験と勘にたよるほかありません。何回か全体的なピッチ上げを繰り返し、なんとか全体的になめらかな状態になったら、今度はしばらくピアノを弾き込みます。すべての音をじゃんじゃん弾く必要があります。こうすることによって、駒や上駒、アグラフなど、弦とピアノが接する場所での摩擦による1本1本の弦の張力の偏りを解消します。また、その間にもピアノは張力に抗して変形を続けます。サウンドボードも弦の圧力に抗しています。それら動きがほぼとまり、均衡状態にいたるのには時間が必要です。どれくらいの時間が必要かは、ピアノの構造や、材木の性質、また、ピアノの古さによって違ってくるので、なんとも言えません。やってみないとわからないのです。  こうして、すべての弦を平均的に正しいピッチに近づけたところで、はじめて、正確な調律ができるようになります。

 調律は、ほとんどくるっていない状態でのみ、正確にできます。大きくくるってしまうと、1本あわせると、そのことが他の弦をくるわせるわけですから、 すぐには決してよい調律はできないのです。「まだくるっていないから調律しない」ではなく、まだ、くるっていないうちに調律するのが、ピアノを楽器として生かす大切なポイントです。

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「ピアノの手入れ」

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